カルト「二世」問題に対する声明
カルト「二世」問題
勧誘されてカルト信者やカルト的団体のメンバーになった大人の陰には、常に子どもたちへの人権侵害が疑われるという問題があります。いわゆる「二世問題」です。
団体の教えに従う親によって特有の価値観に基づいて育てられた子供たちが成長する過程には、一般では許容される行動を規制する親との関係の葛藤、一般的な常識とはかけ離れた教義に基づいて育てられた価値観、そして教団・団体への忠誠、そこでの活動の強制、学校での価値観の異なる同級生と関わることの困難や忌避の推奨などに、心を悩ませることが多くあります。そして社会に出て直面する問題は更に複雑なものになり、二世の心が大きく揺れ動くこともあります。そんなときの親や団体側からの強い働きかけ、また団体外の社会の側からの要請が、その後の人生の選択を大きく左右しがちです。また、もし仮に勇気を振り絞って脱会できたとしても、家族関係は崩壊し、さらには植え付けられた恐怖感や罪悪感に苛みつづけて自由に生きられないこともあります。
世界的にも、カルト問題を考える時には「Born and Raised」(そこで生まれ育ったメンバーのこと)が大きなテーマの一つになっており、特にデリケートな対応が必要な問題とされています。日本脱カルト協会でも、二世の声に耳を傾けて、身体健康の保護、婚姻、学問や教育の受容、職業選択などの自由と人権擁護の視点から取り組みを始めています。
カルト団体内の二世の問題を取り上げた書籍、また脱会した二世たちの手記を何冊かご紹介します。ぜひこの二世問題にも目を向けて頂きたいと思います。
手記・体験談:
秋本弘毅 1998 エホバの証人のこどもたち わらび書房
大沼安正 2002 「人を好きになってはいけない」といわれて 講談社
佐藤典雅 2013 ドアの向こうのカルト 九歳から三五歳まで過ごしたエホバの証人の記録,河出書房新社
坂根真実 2016 解毒 角川書店
高田かや 2015 カルト村で生まれました。 文藝春秋
日本脱カルト協会編 2011 二世が語る、脱会と回復 日本脱カルト協会会報,第16号特集Ⅱ 日本脱カルト協会.
参考:
紀藤正樹・山口貴士 2007カルト宗教 性的虐待と児童虐待はなぜ起きるのか (アスコム)
黒田文月 2007 家族の宗教問題で悩む青年期男性の心理療法:カルト2世からの解放と自立 心理臨床学研究(24), 664-674.